"僕は合理的な説明がつかないことでも、「そういうことって、あるよね」というふうにおおらかに受け止めるべきだと思うんです。別にそれで誰が困るというわけでもないんだから。でも、科学的な説明がつかないことについては、「そんなことあるはずがない」と簡単に切り捨てる人が多い。切り捨てて済ませられるうちはいいけれど、自分の身に差し迫って「そういうこと」が起きると、どうしていいか分からなくなってしまう。そして、実際に目の前で起きた出来事なのに、「これは幻覚だ」と強弁して目を閉じたり、逆に肝をつぶして変な「尊師」とやらに帰依したりしてしまう。
武道では「胆力」と言うんですけれど、「驚かされちゃいけない」と言うことを教えてくれる。
「驚かされない」ための秘策は、いつも「驚いている」ことなんです。「驚かされる」は受け身の経験だけれど、「驚く」は能動的経験でしょう。自分から進んで驚く。
「へえ、こんなことがあるんだ」「これはびっくり」と言う風に、説明できないことを日常化していれば、人知を越える様な経験にたまさか遭遇しても「そういうことってあるよね」で済ませることができる。眼を閉じることもないし、オカルティストにすがりつくこともない。
これ、凄く大事なことなんですよ。「どうふるまっていいか分からない時に、適切に振る舞う」というのは生物の生存戦略の根幹部分なんだけれど、そういうことを教えるのが文学の一つの仕事なんです。文学は人知を超える様な経験をした時の振る舞い方を教えてくれる。
人間の理解を超えたものとコミュニケーションをとるときにはどうすればいいかを教えてくれる。
割と簡単なんですけどね。あわてない。じっくり出来事を観察する。それから、「どうしていいか知っていそうな人」を探し出して、その人から助言なり支援なりを得る。それだけのことなんです。"
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